シリーズ企画

ズワイガニ

2007.11更新
みず菜 京都のええもん

 京都府内でとれるおいしいものを再発見してもらう「京都のええもん」シリーズ第三回目は「ズワイガニ」です。

 日本海のズワイガニ漁が一一月六日に解禁となり、丹後では舞鶴、間人、浅茂川漁港から一五隻の底曳網漁船が出漁し、一斉に網が入れられます。丹後沖のズワイガニ漁は経ケ岬の沖合十五~五〇キロの水深二三〇~三五〇メートルで行われます。

 松葉ガニ、間人ガニと呼ばれるのはズワイガニの雄で、甲羅の幅が一五センチを超えるものもいます。淡白でありながら上品な甘みをもつ身、何と言っても濃厚な味わいの「カニみそ」(肝豚臓)は絶品です。コッペ、セコガニと呼ばれるのが雌で、甲羅は七~八センチ程度と雄に比べると小型、お腹には卵を抱いています。雌の場合はこの「外仔」(卵)と甲羅の中の鮮やかなオレンジ色をした「内仔」(卵巣)が格別です。同じズワイガニでも雄と雌とで、全く違った味わいを楽しむことができます。

1. 資源を保護しながら獲る!!
 ズワイガニは産まれてから約三ケ月はプランクトンのように海中を漂って生活します。その後、海底での生活に移り、一〇~一二回の脱皮を繰返し、ようやく親ガニとなります。雌はいわゆるコッペが親ガニで、それ以上脱皮することはありません。一方、雄はその後も脱皮を行うために、雌に比べ大きくなります。ズワイガニは親ガニになるまでに約七~八年と長い年月がかかります。

 京都府のズワイガニ漁獲量は、昭和三九年には約四〇〇トンありましたが、四〇年代から乱獲などの影響により減少し、昭和五五年には約五〇トンまで落込みました。そこで、漁業者と海洋センターとが一体となって、ズワイガニを保護しながら獲る方策を検討しました。

 そのひとつとして、漁場の一定区画にコンクリートブロックを設置し、網を曳くことができない「保護区」を昭和五八年に全国で初めて、丹後の沖に造成しました。現在、「保護区」は六ケ所、合計面積は約六八平方キロで、これは甲子園球場一七〇個分の広さに相当します。

 その他にも、漁業者の皆さんはズワイガニの禁漁期には、ズワイガニが生息する場所での操業を自主的に禁止にしたり、 同時期にカレイなどの魚は獲り、ズワイガニは網外に逃がすことができるような改良型の網を使ったり、色々な保護方策を実践しています。その結果、京都府のズワイガニ漁獲量は徐々に回復しています。


2. アジア初、MSC認証(海のエコラベル)をまもなく取得!!
 近年、マグロやウナギで乱獲が原因となり、漁獲割当量の大幅削減や輸入規制が課せられるなど、社会的にも大きな問題となっています。このような中、京都府の底曳網は資源と環境に配慮した漁業に与えられるMSC認証(海のエコマーク)をまもなく取得する予定です。認証の対象となるのは、これまでから資源管理の取組みが進んでいるズワイガニとアカガレイでアジアで初めての認証事例となります。今の季節が旬の丹後のズワイガニとアカガレイを是非味わってみてください。


MSC認証

 MSC(海洋管理協議会)は1997年に設立された国際NPO法人で、本部は英国ロンドンにあります。これまでアラスカのサケ、タラ漁業、豪州のロブスター漁業、英国のニシン漁業など欧米やオセアニアを中心に23の漁業で認証されています。認証漁業で水揚げされた水産物にはMSCロゴマークが付けられ、現在では400種類近い商品が流通販売されています。日本でもMSC商品を扱う小売店等があります。MSC商品を購入することにより、消費者の皆さんも資源と環境に優しい漁業の推進に参加していただければと思います。

MSC漁業認証の3原則

(1)水産資源が(枯渇しないように)適切に管理されている。
(2)漁業が(海の生態系の維持など)海洋環境に配慮している。
(3)(持続可能な漁業を行うための)規制を守る仕組みがある。

良いカニを見分ける

 水揚げされたカニの甲羅にミミズのようなものが付いているのを目にすることがあります。これは「カニビル」といい、普段は海底の泥の中に棲んでおり、魚の体液を吸って生きています。カニの甲羅に付くのは卵を産むためで、カニには何の害もありません。直系5ミリ程度の黒い粒はカニビルの卵です。この辺りの海底はやわらかい泥で覆われており、適当な産卵場所が無く、格好の場所となっているのがカニの甲羅というわけです。カニビルの卵が甲羅に沢山付いているカニは、脱皮してからの月日が経っており、見入りも良いといわれています。