シリーズ企画

アワビ

2008.02更新
アワビ 京都のええもん

 都府内でとれるおいしいものを再発見してもらう「京都のええもん」シリーズ第四回目は「アワビ」です。

 京都の海で獲れる高級食材といえば、ズワイガニ、トリガイ、そして今回紹介するアワビがあげられます。アワビといえば、岩手県などの三陸産のイメージが強いかもしれませんが、京都府沿岸でも古くからアワビ漁が行われています。京都府で多く獲れるアワビは、三陸沿岸のエゾアワビとは別種のクロアワビです。肉厚な身は、刺身やステーキ、蒸しアワビなど、名までも加熱して美味しくいただけますが、高級品なだけに気軽に口にできないのが残念です。

1. 主体はクロアワビ
 ひとくちにアワビといっても、京都の海で獲れるアワビには三種類いることをご存知でしょうか。殼の小さい順にクロアワビ、メガイアワビ、マダカアワビです。しかし、漁獲されるアワビの約九割がクロアワビ、残り一割がメガイアワビであり、マダカアワビは極めて希です。こうした漁獲割合の違いには、生息水深と漁獲方法が関係しています。クロアワビは主に水深五mまで、メガイアワビとマダカアワビは水深五mよりも深いところに生息しています。京部府でのアワビの漁獲方法は、船上から箱メガネで海底を覗き、竿先に付けた鈎で捕らえる。"水視漁法"と素潜りによる"潜水漁法"です。両漁法とも、漁獲可能な水深帯がおおよそ五mまでのため、クロアワビが漁獲の中心となります。

 クロアワビの産卵は、秋から冬にかけて行われます。受精卵から孵化した幼生は、プランクトンとして一週間ほど海中を漂い、その後、海底の大きな石や岩盤などに着底します。着底後間もない稚貝は、岩に付着した珪藻や海藻の幼芽などを食べていますが、成長に伴い小型海藻やホンダワラ類などの大型海藻も食べるようになります。京都府ではアワビ資源を守るため、漁獲サイズを殼長一〇m以上と決めています。このサイズまで成長するには、四~五年の長い年月がかかります。

2. 増産のための取締
 京都府ではクロアワビの資源を増やすために、漁業者によって毎年一六万個前後の稚貝が放流されています。この稚貝は、京都府栽培漁業センターで生産されているものです。毎年秋になると採卵が行われ、孵化した稚貝は放流サイズの殼長三cmになる翌々年の春まで陸上の水槽で飼育されます。クロアワビの稚貝は病気にかかりやすく、飼育が難しいとされていますが、栽培漁業センターでは他県に先駆け、病気を予防する飼育法を確立し、元気の良い稚貝作りを行っています。

 放流された稚貝は、放流後三~同年で漁獲サイズに成長します。全ての稚貝が大きくなってくれると良いのですが、実際にはヒトデや力二、タコなどの害敵生物に捕食されてしまうものも少なくありません。そのため放流場所では漁業者によって害敵駆除作業が行われています。また、府立海洋センターでは、放流直後の稚貝が素早く隠れ家に逃げられるように、稚貝の活力を損なわずに放流できる新しい放流技術の開発を行っています。クロアワビ資源が今以上に増えれば、みなさんが京都のアワビを□にされる機会も増えることでしょう。

3. これからが最も美味しい季節に
京都府でのアワビの漁期は一~八月および十二月で、九~十一月は産卵前の親貝を守るために禁漁となっています。解禁後の十二月から翌年の春までが漁獲量が多く、夏には岩の隙間の奥深くに隠れるため漁獲量は減少します。アワビは水温の低い冬から春にかけて多くの餌を食べ、一年で最も良く成長することから、この時季がもっとも美味しいのではないでしょうか。京都の綺麗な海で育ったアワビ。機会があれば、是非、味わってみてください。