シリーズ企画

みず菜

2008.05更新
みず菜 京都のええもん

 京都府内でとれるおいしいものを再発見してもらう「京都のええもん」シリーズ第五回目は「みず菜」です。

 「みず菜」は、手頃な価格で一年中流通し、調理も簡単なことから、京野菜の中で最も多くの人が口にする品目となっています。
 栽培の起源は古く、天和三年(一六八三年)の書物にも「水菜」という呼び名が記載されていますが、実際には、さらに昔から綿々と栽培が続く京の伝統野菜 です。特に、都の西南部、壬生・東寺・九条付近のものが良質であったと伝わっています。こうした産地では、豊かな流水を畑のうね間に引き込んで栽培したこ とから「水入菜(みずいりな)」、そこから転じて「水菜」と呼ばれるようになったとされます。「みず菜」はビタミンC、Eなどを含む健康野菜ですが、何と いっても成分の九割以上は水です。現在はハウス栽培が中心となりましたが、良い水が良い「みず菜」を育てることに変わりはありません。昔も今も「みず菜」 には産地のおいしい水がぎっしり詰まっています。

1. 京野菜の代表格「みず菜」
収穫風景  「みず菜」は元来、夏の終わりに種を播き、秋に苗を植え付けて栽培する大株づくりが主流でした。冬には葉数六〇〇枚以上、重さ三キログラム以上にも育ち、 大変立派な野菜になります。しかし、大株は現在の一般家庭向けには大きすぎるため、京都ではそれまで間引き菜の扱いで流通していた小株(小束)に着目し、 平成元年頃から二〇〇グラム入りの小袋出荷を開始しました。南丹地域を皮切りにハウス周年栽培が始まり、生産者、関係機関が一体となって新たな「みず菜」 の生産を推進した結果、二〇年を経た今日では丹後地域から山城地域まで京都府全域で栽培される、京都を代表する野菜となりました。

2. 歴史と調理方法
壬生菜  「みず菜」とよく似た京野菜に「壬生菜」があります。ヘラ状の長円形の葉を持つもの(丸葉)が「壬生菜」、切れ込みの深い葉を持つもの(切れ葉)が「みず 菜」です。この二種はもともと同じ仲間でしたが、一八〇〇年代に分化したとされています。「壬生菜」は京漬け物の素材として、「みず菜」は煮炊きものの素 材として庶民に愛されてきました。

京みず菜の冷しゃぶ 現在主流となっている小株栽培の「みず菜」は軟らかさと歯切れの良さを合わせ持つことから、加熱調理だけでなく生食(サラダ)での利用が増加し、近年では和食はもとより、中華にフレンチ、イタリアンにと幅広い分野で活用されています。
3. 一年中おいしく
高温期の「みず菜」栽培試験  「みず菜」の生育は季節によって違います。種を播いてから収穫まで、冬季には二ヶ月以上かかりますが、夏季には一ヶ月かかりません。ところが、夏季の「みず菜」は株が細くなるなど暑さの影響で栽培管理が難しく、出荷量が減少しがちです。産地では工夫を寄せ合って「みず菜」の安定供給に向けた取り組みを進めています。
かつて「みず菜」の旬といえば冬場・鍋物の季節でしたが、今では一年中美味しく召し上がっていただけるようになりました。丹精込めて育てられたみずみずしい京都の「みず菜」を是非ご賞味ください。

地元京都府産の新鮮な「みず菜」をどうぞよろしく

 京都と東京の消費者に京都府産「みず菜」の印象についてアンケート調査を行いました。  その結果、京都と東京のいずれの消費者も、品質に対して良い印象を持っていることがわかりました。京都では鮮度の良さや地元産であるという回答が、東京 では味の良さや高級野菜といった回答が多く寄せられました。地域ごとにブランドイメージが異なることを意識した生産と出荷を心がけることによって、消費者 の心をつかんでいきたいものです。

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東京でも人気の京都府産「みず菜」

 東京の消費者に、購入したことがある京都府産野菜の品目と理由を尋ねてみました。「みず菜」「万願寺とうが らし」の味、「九条ねぎ」「金時にんじん」の色、「賀茂なす」の形など、特徴のある品目への回答が多く寄せられました。その中でも「みず菜」は一番人気で す。京都府産は軸が細くて柔らかく、苦みが少ないことが人気の理由となっています。ふだん何気なく食べている京都府産の「みず菜」。他と食べ比べてみる と、その良さが再発見できるかも知れませんね。

表2