シリーズ企画

バイカル

2004.11更新

バイカル下鴨本店


株式会社バイカル
社長 川勝亘晃さん
 今回は洋菓子の店『バイカル』をお訪ねしました。

 京都下鴨の地に本格フランス菓子の店として1955年に創業以来、半世紀になろうとしています。 現在では、下鴨本店(洛北高校南)のほか銀閣寺、金閣寺、北白川や枚方の樟葉などにも店を構え、洋菓子の「老舗」とも言うべき存在です。
 社長の川勝亘晃さんは京都大学を卒業後、コーネル大学大学院を卒業され、大手の生命保険会社でファンドマネージャー等に従事していたという経歴の持ち主です。 川勝さんは自らを菓子職人ではないとおっしゃいますが、菓子製造一級技能士の資格とパン・菓子の職業訓練指導員の免許をお持ちです。
 1992年に(株)バイカル入社以来、1994年にバイカルの系列会社(株)三美の社長となられ、2001年には(株)バイカルの社長に就任され、先代の事業を引き継いでこられました。 そこで、川勝さんに色々とお話を伺ってきましたので、紹介させていただきます。

バイカルの創業―地域の方のために
 「バイカル」の創業についてですが、昭和30年当時というのは日本でもフランス菓子の店はありましたが、まだ洋菓子の黎明期のため、フレッシュクリームやフレッシュバターといいながらも植物性のものを使っていたり、また実際にフランスで修行した職人も数少ない時代でした。そこで、先代が他の洋菓子店と違う店を作ろうと単身フランスへ渡り、本格的に修行をし、日本では珍しい本物のフレッシュクリームなどを使ってバイカルをスタートさせました。
 当初から、地域のみなさまに喜んでいただけるようにと思っておりましたので、和菓子店の多い京都でも、やりにくさは特に無かったようです。
 「バイカル」は「バイカル」としての役割、カテゴリーの中でそういうコンセプトとしてやってまいりました。そこで、現在でも基本的には百貨店展開をせず下鴨本店のほか金閣寺、銀閣寺、山科、樟葉、奈良学園前など一貫して住宅地に店を構えるようにしてまいりました。

店名の由来
 先代がまだ修行時代、フランスへ渡った際(昭和30年前後)、東洋人がまだ珍しく、仕事を求めてもいつも断られてばかりだったそうです。
 なんとか仕事にありついたところでも皿洗いばかり。その中で1人だけ、ロシア人の兄弟子が優しくしてくださり、先代に対していろいろな技術を教えてくださったそうです。 先代が日本へ帰国するときに「日本で店を開くなら私の生まれ故郷のバイカル湖の名前をつけてほしい。そうすればこの修行時代のことを思い出してもらえる」と兄弟子は別れを惜しんでくれたそうです。そこで兄弟子への感謝の気持ちも込めて日本で開く店の名前を「バイカル」としたと聞いています。
 後から知ったことですが、バイカル湖は世界最古の湖にして最大・最深で透明度が高く、古代からの様々な生命を宿した湖なのです。また、「バイカル湖」の「バイカル」という言葉は現地のカタール語で『豊かな命の湖』という意味だそうです。
 このような『バイカル湖』と、古都・京都で古くから洋菓子店を営む「バイカル」。いろいろな思いを込めたこの繋がりを大切にしていきたいと考えております。

アップルパイでのこだわり
 創業当初からの人気商品といえば『アップルパイ』があげられます。この商品は材料にこだわり、りんごは契約農家とまではいいませんが、青森の特定の地域産の「紅玉」を40年以上使っております。この「紅玉」は小さくて実が硬いため、通常生ではあまり食べないりんごですが、シロップで炊き込んでも煮崩れせず、シロップのうまみ成分を含んでやわらかくなるので『アップルパイ』には理想的な素材だと思っています。また、パイに使うバターも、メーカーにお願いして当社専用の物を作ってもらっています。
 他にも素材のこだわりというほどではありませんが、最近人気の『ビアンベニュ』(フランス語の「ビアンブニュ」には大変よく実った・ようこそという意味があります。)という完熟の果肉を使った夏向きのゼリー商品があります。これには岡山の清水白桃、山形のラ・フランス、長崎の茂木びわを使っています。ラ・フランスと茂木びわは通常の流通経路で手に入りますが、清水白桃は生産量も少なく農園によっても味が違うので、現地でいろいろ味見をしてから決めさせてもらいました。

最高のチョコレートを探して...
 フランス菓子にはチョコレートが欠かせませんが、今では全国的にパティシエが好んで使う一番良い物はは『バローナ』と言われています。実は、これは先代が初めて日本に紹介したものです。
 昭和50年代、世界一のチョコレートは「カカオバリー」だと教えられていました。先代はそれを探しにその会社が行っている講習会に参加しました。しかし、そこで、フランス全土から集まったショコラティエ達から、「タンエルミタージュにバローナという小さな会社がある。味はそこが最高だが、少量しか手に入らない。」と教えられたのです。
 早速、いろいろな手をつくして教えてもらったところにたどり着きますと、思い描いていたよりもはるかに小さな会社だったそうです。さらに、先方にすれば、見たこともない外国人に突然に、「交渉」と言われても怪しまれ、なかなか信じてもらえず、諦めて帰ろうとしたそうです。
 そのとき、裏に捨ててあったカカオを絞ったあとのココアを話の種にと舐めてみたところ、それこそこの世のものとは思えないくらいおいしかったそうです。ココアでこんなにおいしいのならと、諦めずに粘り強く交渉をしてようやく輸出の了承を取りました。
 当初は本当に少量で、『銀座の某店』と「バイカル」の分ぐらいしかありませんでした。ですから、「バローナ」を日本で使いだしたのは「バイカル」だと言ってもいいと思います。 その後、私はチョコレート製造会社によるブレンドではなく単一のカカオで最高のものをと思うようになりました。
 調査しましたところ、世界で最高の香りと味覚のカカオ豆はベネズエラのサンホアキンという農場産のクリオロという品種であることが分かりました。収穫量は少ないですがその農場と契約をし、現地の工場でチョコレートに加工してから輸入することとしました。あえて現地で加工するのは、輸送中に虫などがつかないように薬品を使うことを防ぐためです。
 現在このクリオロを100%使用している商品は「ショコラ・クリュ」という秋冬限定のケーキです。また、今年のクリスマスには、カカオの段階から無農薬で育て、そのことが保証されたチョコレートを使ったケーキを発売する予定です。ご期待ください。

パンも洋菓子?
 ところで、フランスではお菓子を(パンも含めて)生地によって分けているんです。ですから、パンもパートルヴェという発酵生地を使うものとしてお菓子の範疇に入ります。
 また、フランス菓子といいましてもすべてフランスと同じ材料を使うことは無いと思っています。確かにフランスで使用しているものと全く同じベネズエラ産のチョコレートを使ったりもしますが、アップルパイのりんごは青森産ですし、桃は岡山産、砂糖は和三盆糖など日本の食材を工夫して使用しています。
 素材は大切なものですが、「フランスと同じ」にこだわりすぎると逆に日本ではおいしさを損なうことにもなりかねません。
 フランス菓子の心を伝えることを大切に考えています。

『洛○(らくま)』のこと

洛○(らくま)
 百貨店などからも出店の誘いはありましたが、長い間、地域の店として、というコンセプトから実現しませんでした。
お客様からの問い合せにも以前は「京都駅から一番近いのは金閣寺店です」などとご迷惑をおかけしていました。そのような事情から南方面の拠点として、昭和55年に京都駅地下街のポルタ店を開店することになりました。
 その後、平成9年にはジェイアール京都伊勢丹にも出店することになりました。そして今年2月、地下1階のリニューアルにあわせて店の半分以上のスペースを単品にしぼることにし、『洛○(らくま)』というオリジナルのお菓子を作り上げました。これはクリームを柔らかい不思議な食感の生地でサンドしたものです。『フレッシュバニラ』と『香りカプチーノ』の2種類があります。
 また、夏は『抹茶』、秋は『焼き栗』などというように季節の和の素材を洋菓子に生かし、京都の洋菓子というものを全国に発信していきたいと考えています。
 なお、この『洛○』は京都伊勢丹店のオリジナル商品ですので、ここでしかお求めいただけません。この『洛○』という名前も当初は『洛丸』にしたいと思っていましたが、"らくがん"と読めるということで商標登録ができず、最終的に『洛○』となりました。

「バイカル」の目指すもの

川勝社長さんと小西編集局長
 和菓子屋さんは長い歴史を重ねることで認められますが、洋菓子屋は新しいものが認められる傾向があります。ですから、バイカルは来年で創業50年になりますが、老舗と言われることにはその気恥ずかしさもあります。
 今までは良い技術、良い材料を使ってきて50年経ちました。店もどんどん増えましたが、これからは「ここにしかない、ここに行かないと買えない」そういう店を目指したいと思います。そして「バイカル」のオリジナル商品を、できれば各店のオリジナル商品を開発していきたいと考えています。その代表とも言えるのが『洛○』なんです。ですから、『洛○』はいま一番力を入れている商品であるといえます。
 生協さんは、特に食について安全なものを厳選されており、私ども「バイカル」も安全であると認めていただいたものと自負しております。できるだけ添加物を使わない、香料も使わずにすむなら使わない、という姿勢を評価していただいたものと思っています。おかげさまで、「生協ギフトカタログ」に取り上げていただいた最初の年に第2位、翌年からは第1位にランキングされ大変光栄です。
 今後とも、このことに恥じないようもっと良いものを目指して参ります。ぜひ一度お店にお立ち寄りください。

社長お勧めの商品ベスト5

1.ショコラ・クリュ
ベネズエラ産、最高級のカカオ、クリオロ種を100%使用した、オリジナル生チョコレートケーキです。(秋・冬期限定)

2.アップルパイ
青森産紅玉りんごを使用し、手折りのパイ生地で香ばしく焼き上げました。

3.マロンパイ
風味豊かな大粒の栗を手折りのパイ生地で包み込んで焼き上げた秋のスペシャリテです。

4.洛○(らくま)
特別な生地に香り高く口どけのよいクリームをサンドしました。バニラとカプチーノの2種類の味わいに季節ごとの洛○がございます。

5.サブレアマンド&ブロッチェンパイ
創業以来のロングセラー商品の組み合わせです。

バイカル下鴨本店
京都府京都市左京区下鴨本町4-2