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京のお漬もん処 近為

2005.10更新

京の老舗を訪ねるシリーズ、今回は、夏・冬の生協ギフトでも常に上位の人気を得られている、お漬物の「近為」さんをお訪ねしました。

 「近為」さんは明治12年に、京都西陣の地に創業され、百年ほどの歴史をお持ちですが、新しいものにも挑戦され、成功を収められているようです。
 お店は、京都本店、亀岡工場店、深川1、2号店、人形町店、鎌倉小町店、北鎌倉店と高島屋日本橋店があります。
 保存料や着色料を一切使わず、昔ながらの製法を守っておられ、各店では毎日社員の方が商品のチェックをされています。常においしく召しあがっていただくための"こだわり"だそうです。手作りが多く、旬を大切にしておられ大量生産はできません。人気商品も大量には出せませんが、そこは一切妥協をしないとのことです。
 「近為」さんは、どうしても食卓の脇役的存在でありますお漬物を主役にした料理を考案され、現在それが人気にもなっております。
 そこで、「近為」さんのお漬物について色々とうかがってきましたので紹介させていただきます。
 なお、「近為」さんから読者の皆様へのプレゼントとして各種お漬物詰め合わせを提供いただきましたので奮ってご応募下さい。(紙面をご覧下さい)

伝統の味
編集部(以下、編) 以前と比べて味は変わってきましたか。
谷口専務(右写真中央:以下、近為) あまり変わってないと思いますが、塩分を押さえぎみで、添加物も減ってきたとは思います。野菜本来の味ができるだけ出せるようにと、変わってきたのではないでしょうか。
 あまり辛すぎないように?
近為 そうですね、塩は控えめにはしていますが、漬け方はずっと変わっていません。私どもはまだまだ原始的な漬け方をしておりまして、例えば「柚こぼし」ですが、それを機械じゃなくて全部包丁で切ってるんです。われわれとしましては、しっかり下漬けをした後で本漬けをする原始的なやり方にこだわりながらやっております。
 今話に出ました「柚こぼし」がこちらの看板商品なのですか。
近為 これは、四代目がそれまでできてたものを完成させ、「柚こぼし」というネーミングをしたものです。
 お客さんに若い人たちが多いようですが。
近為 雑誌とかで色々と紹介していただいたり、町屋の雰囲気に若い人たちが興味をお持ちになられたりで、以前から、若いカップルの方とかが多く来られています。
 外国の方も来られるのですか?
近為 はい、よく来られますが、日本食にもかなり興味のある方が来ていただいており、「お箸」も上手ですよ。塩漬けがどうかなあ、と思っていたんですが、案外受け入れられているようです。
 今、使っておられる野菜はどちらの方から?
近為 大体が契約農家からお野菜をいただいて、足らずまいは中央市場から仕入れています。
 去年のように台風などで野菜が全滅したりすると、その商品は作らないということもあります。
 例えばお中元ギフトの中でどうしても胡瓜がいる、ということであれば、どこまで行ってでも探しますが、そういうギフトに入ってない商品で野菜が悪ければもう作りません。それは製造販売をしているかがゆえにできることで、お野菜からこだわっていきたい、と考えています。

お茶漬け席
 お茶漬けのコースはいつ頃から始められたのですか?
近為 そうですね、もう20年くらいになりますね。お魚付きは、昨年くらいから出させてもらっています。それまでは、ほんとにお漬物だけのコースでした。内容は季節によって変わりますが。
 お客さんの反応はどうですか?
近為 ええ、お電話でお問合せがあったときに驚かれるのは、なぜお茶漬けに3~40分もかかるのかということです。どうしてもお茶漬けサラサラというイメージがあるんです。  お漬物は普段脇役なのが、お茶漬け席ということで主役にさせてもらっているんです。おかげさまで皆さん、お代わりをしていただくくらいたくさん召し上がっていただいています。試食では、よく食べて2、3種類くらいまでですよね。それを15、6種類くらい出させていただいています。お席ではスリゴマなどもご用意させていただき、食べ方の提案をさせてもいただいておりますので、時々お客様が「また、うちでもやってみよ」とかいうお声をいただいたりするんです。
 初めの頃は、相当苦労されたのではないですか。
近為 そうですねえ。まあ立ち上げるまでにかなり時間をかけました。確かにお漬物は最後のお茶漬けサラサラなんです。それをどうやって主役にもってきたらよいのかと試行錯誤しました。そこで、逆に提案をしていったらどうだろう、ということで、お寿司など、何かお漬物を主役にするための脇役をつけて、にぎやかになるようにしたんです。
 店は最初からここですか。
近為 はい。この建物も創業以来のものなのですが、お茶漬けを始めたときにだいぶん手直しをしました。典型的な京都の町家です。うなぎの寝床...。真ん中に庭をとらんことには光がとれないという。
 インターネットにも力を入れられているようですね。
近為 地方発送が結構多いんです。お店を持たない変わりに、お客さんに不便をかけないようにと、頒布会もやっております。10年くらい前からこういう形になってきました。

老舗のこだわり
 京野菜はよく使われますか?
近為 特に京野菜にはこだわっていませんが、国産野菜を使っています。野菜は時期によって採れないものがありますが、収穫期にはできるだけ京都のものを使っています。今でしたら、胡瓜とか瓜とか茄子とかは京都の物を使っています。
お漬物のこだわりと言いますと。
近為 そうですねえ。まあ、何と言いましても味を大事にしていきたいです。手間暇かけて作って。ファーストフードではなくてスローフードです。じっくりと漬けよ。じっくりと作ろと。今までからファーストフードになったことはないんですが...。
 味について何か秘伝的なものは?
近為 味付けは本漬けの段階でして、そこはもう工場長しか知らない世界です。実際、味は少しずつ変わっています。時代に合わせたり、素材の味も変わったりしていますので。
 新しい商品なんかはどうですか。
近為 最近やり出した中では「長いも」ですね。お惣菜みたいですけど、しっかり漬けています。
 若い人向けにサラダ感覚で食べていただけるように、春キャベツを出したりしております。
 冬と夏では野菜の味はだいぶ違うんですか?
近為 お野菜の種類が変わります。
やっぱり寒い方がいいんですか?
近為 われわれの一番のお勧めは千枚漬なんです。いつでも食べていただきたいんですが、冬の商品になりますので冬しかできません。夏の野菜は温室で年中作れますが、かぶらは夏には作れません。ですから、どうしても本場は冬ということになってしまいます。
 今後の課題のようなものは。
近為 実はこれ以上大きくしたくはないんです。製造が追いつかないですから。ほんとにいいものを作ろうとしたら数が限られます。限界がありますから、それを超えてまで作ろうとすると質を落とすしかありません。それはできません。守るところは守りたい。商品もそうですし店もそうです。でもただそれだけじゃなくて、新しい時代の流れといったものにもついて行きたいと思っています。その辺を上手く咬み合わせながらやって行きたいですね。

京のお漬もん処 近為
京都市上京区千本通五辻上ル牡丹鉾町576
電話 075-461-4072





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URL:http://www.kintame.co.jp/